WEB業界は、IT産業の中心としてかなりのお金が動いているようにも見えますが、この業界が抱える問題は予想以上に多く危機的状況です。
クライアントの質の低下。制作側の価格崩壊。目に見えるコストと見えないコスト。WEBサイト・ホームページ制作というものを根本的に理解する事が求められている気がします。
クライアントの質の低下
一番の驚きはクライアントの質の低下。まるで個人ブログを開設する様な感覚で制作の依頼をしてくる。
ブログというツール自体、WEB素人でも気軽に始められ、アフィリエイトという収益まで生むことが可能になった中、同じ感覚で企業のサイトも作ろうとするお客さんが増えている。
原価でプロに仕事をさせようとする
制作会社の料金表や個人ブログなどで、WEBサイト・ホームページ制作にかかる費用を知る機会が増えたせいか、素人のWEBリテラシーが多少よくなってきている気がします。
その一方、提示された見積もり対する勘違いも酷くなってきている。
先日相談をしたお客さんのは、私が提示した見積もりに対してこのような返答をした。月額費用をサーバー費(初期込)+ドメイン費(月割)+管理費で1500円。
管理費には、アクセス解析、メールアドレスの追加等のサーバー関連、リダイレクトなどの正規化、その他サポートも含まれる。企業としてなら原価スレスレのあり得ない金額だが、お客さんからの返答は、
月額の1500円は高すぎるでしょう。こちらがWEBもついて何も知らないと思ってそういったやり方はよくないでしょう
この人はいったん何を考えているのだろうかと思った。自分で言うのもアレだが、WEBのプロに原価で管理させるつもりなのか。どこかのブラックな制作会社とは違い、サーバー費とドメイン費は原価で頂くのは当然である。
しかし、管理費を無償でやらせようとする神経は全く理解できなかった。その他に初期制作費用についても高すぎると言われた。
やり取りの中でも専門用語を織り込んで多少知っている感を出していたお客さんだったが、制作フローや運用管理で発生するコストに関する事は全く理解していない様子だった。
当然だがこの案件は断った。サービスに対する利益率がどう見ても低すぎた。
こういったお客さんは、予算という感覚がなく出来るだけ安く作りたいという一心で依頼してくる。ただWEBサイト・ホームページを持ちたいという考えのみ。
WEBサイト・ホームページというツールをいかに利用してビジネス展開をするかという本来の目的を失っている場合が多い。
制作側での価格争い
ここ数年で感じたことは、WEBサイト・ホームページ制作にかける費用の低下。10年前はHTMLで作られた10ページほどのコーポレートサイトに制作費として50~100万をかけていた企業も少ないくない。
今となっては昭和レトロなFlashや700pxの横幅などデザイン的にもダサく見える。しかしそれだけWEBサイト・ホームページには企業のビジネスツールとしての価値があった。
WEBサイト・ホームページに価値があるのは現代も同じ。むしろ、ほとんどの人がインターネットを利用してネットリテラシーが高まっている今はもっと価値が上がっていてもいいはずだと思う。
サービスの質より価格争い
しかし、格安・無料でWEBサービスを提供する低価格制作業者が増えたり、自身で営業の出来ないクリエイターが集まったクラウドソーシングでの価格破壊で、クライアントが基準とする制作費の基準が明らかに下がっている。WEBという儲かる商材に目を付けた人間・企業が急増した結果だ。
そんな中でも、価値のあるサービスや費用対効果を得られるような、高い費用を払ってでも納得できる提案で生きの残ろうと必死な優良企業も多数ある。そんな努力も虚しく、受注までの入口が極端に狭くなって、勝負する事すら難しくなっているのが現状だ。
「安て良いサービス」は時代の流れで仕方ない事だが、今のWEB業界は「自分で自分の首を絞めている」のようにも私は思える。
目に見えるコストと見えないコスト
WEB制作おいて、デザイン・レイアウトなどは成果物となってクライアントに評価される。
しかし、企画・構成、リサーチ、ディレクションは成果物の材料として利用されるだけで評価の対象として見られない。技術面なら、SEOコーディング、プログラミング、サーバー管理などがそれにあたる。
目に見えないコストをクライアントに伝える大切さ
ほとんどのWEBサイト・ホームページ制作を依頼するお客さんは何も分からない素人でWEBに関して深く理解できていない。
そんなWEB素人に、いかに理解してもらい、評価してもらい、対価を出してもらうかが大切だと思う。
前例で、月額1500円が高すぎると言ってきたお客さんの件だが、しっかり管理費という内容を伝えきれなかった私にも非があるのかなと少々反省する。(だが初期費用がありえないので後悔はしていない)
だからと言って「検索10位内の表示させる」「アクセス数月1万PVにする」「コンバージョン率10%を達成させる」なんて無茶ことは絶対に言えないし、後のトラブルの原因になる。
お客さんからしても、そんな不透明なサービスにお金をかけようとは思わないはず。
目に見えないコストを伝えることはとても難しいですが、しっかり定義しておかなければお客さんにとっても自分自身にとっても余計なコストがかかってくる。
契約前にちゃんと理解してもらい、具体的なイメージをお客さんに持ってもらう事が重要だと思います。
まとめ
WEB業界の流れはとても早く、何も考えないで今のままやっていては絶対に成果を出すことは出来ません。次から次へと新しいアイデアや抜け道を見つけ出す人も現れます。
そんな中でビジネスをする為には制作する側の都合だけでなく、お客さんの気持ちになることがとても大切です。
値切りや文句ばっかりのタチの悪いお客さんがいたり、ありえない値段でWEBサイト・ホームページを制作する業者がいたりと、いろいろ混乱する要素が多いのもWEB業界です。
ですが、そこでブレずに色々なデータを比較して、自分なりの基準を出すことが重要だと思います。
ちゃんとWEBを理解してもらう。納得いく提案をする。そして意味のあるサービスを提供する。全てのビジネスに共通しますが、本当にこれに尽きると思います。
記事のコメント