国立社会保障・人口問題研究所の調査・推計によると、総人口に対する65歳以上の高齢者の割合は、2005年は20%、2015年は26%、2050年には36%になると言われています。つまり少子高齢化によって、日本国民の3人に1人が高齢者になる計算です。
そんな世界一の長寿大国でもある日本の介護を変えた介護保険制度について簡単にご説明します。
かつては介護地獄だった
2000年以前では「老人福祉制度」と「老人保健制度(医療保険制度の一環)」に基づいて高齢者サービスが提供されていました。老人福祉制度は措置制度といって、行政が介護の必要の有無や利用できるサービスを決定する制度のため、利用者にとっては制約が多く非常に使いづらい制度でした。
また、老人福祉制度は基本的に低所得者が対象だっため、中級以上の家庭ではサービスを利用できない場合も多く、ほとんどの高齢者は在宅介護が基本でした。
それにより、高齢者虐待・身体拘束・介護ストレスといった問題が増え、当時は「介護地獄」などといった言葉もマスコミによって多く取り上げられていました。
介護保険法の創設
こうした介護の状況を改善するために、2000年4月からスタートしたのが「介護保険法」です。介護保険法は、高齢者の介護を社会全体で支え合い、介護を必要とする高齢者とその家族などが、介護をサポートするための適切なサービスを受けられる制度です。
介護保険制度の運営責任は各市区町村となっており、自治体によって運営されることとなりました
介護保険の目的
自立支援 | 単に介護を要する高齢者の身の周りの世話をするということを超えて、高齢者の自立を支援することを理念とする |
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利用者本位 | 利用者の選択により、多様な主体から保健医療サービス、福祉サービスを総合的に受け入れられる制度 |
社会保険方式 | 給付と負担の関係が明確な社会保険方式を採用 |
介護保険法で変わったこと
- 行政窓靴に申請し市町村がサービスを決定していた
⇒ 利用者が自らサービスの種類や事業者を選んで利用できるようになった - 医療と福祉に別々に申し込みを行う必要があった
⇒ 介護サービスの利用計画(ケアプラン)を作って、医療・福祉のサービスを総合的に利用できるようになった - 市町村や公的な団体(社会福祉協議会など)中心のサービスの提供のみだった
⇒ 民間企業、農協、生協、NPOなど多様な事業者によるサービスが提供されるようになった - 中高所得者にとって利用者負担が重く利用しにくい制度だった
⇒ 所得にかかわらず1割の利用者負担で利用できるようになった
介護保険料とサービス対象者
40歳以上で介護保険料を支払い、特定疾病の場合は40歳上から、その他は65歳以上からの要介護認定によって、1割負担でさまざまな介護サービスを受けられる制度です。
介護保険制度は40歳上で介護保険を支払っている人が対象(被保険者)となります。
- 65歳以上(第1号被保険者)
- 40~64歳(第2号被保険者)⇒ 特定16疾病の場合のみ
介護保険制度の実施状況
2000年 | 2012年 | |
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65歳以上の被保険者数 | 2,165万人 | 2,986万人 |
要介護(要支援)認定者数 | 218万人 | 533万人 |
要介護(要支援)認定の申請件数 | 269万件 | 523万件 |
介護保険制度の創設によって2000年以前の介護地獄からは脱却したものの、世界一の長寿大国でもある日本の介護にはまだまだ多くの課題があります。
介護サービスが手厚くなり、誰もが利用しやすくなっても、それを支える介護士であったり施設や事業者といったサービス提供者がまだまだ足りない状態です。
これからご家族の介護と向き合う方は、介護保険制度についてしっかり理解する上で、賢く利用することが求められるのかもしれません。
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