カンブリア宮殿で特集され、一躍全国に名が知れた「移動スーパーとくし丸」。買い物難民の救済とビジネスの両立を実現させた、最高のサービスだと感じた。
移動スーパーとくし丸とは?
とくし丸とは地物とのスーパーと提携して、軽トラに生鮮食品や加工食品を乗せ、民家の玄関先まで訪れるサービスだ。
スーパーとの提携やエリアやルートの調査はとくし丸の住友社長が自ら行うが、実際にトラックに乗るスタッフは個人事業主。あらゆる経営コストを削減できる最善の方法なのだろうが、個人事業主に掛かる負担はそこそこ大きい。行政への手続き、それこそ開業から廃業まで自分で行う必要がある。
心配なのが在庫管理だが、とくし丸では売れ残った商品は提携スーパーに返却する。残った商品はスーパーに戻るので在庫管理を心配する必要はない。
とくし丸は高齢者を救う
とくし丸の利用者は主に高齢者。過疎化が進んだ田舎へおもむき、自らの足でスーパーへ買い物に行けない買い物難民の生命線になっている。
山で採れた山菜しか食べていないというお婆ちゃん。本当に嬉しいそうな顔をして、久しぶりの買い物を楽しんでいた。移動スーパーが近くに来ると知ったお年寄りの目が輝いていた。
日本の行政は、とくし丸のような事業にこそ補助金や助成金を投資すべきだと、私は感じた。
経営者はあくまでビジネスとして行っている
しかし、とくし丸の経営者の住友社長はこう語っていた。
国から補助金や助成金をもらうつもりはない。必要としている人がお金を払ってくれるから。そもそもそんなものをもらうとビジネスとして負けている。
経営者としては当然の考え方だ。また、利益が見込めるエリアにしか、とくし丸は行かないとも受け取れる発言をしている。
村上龍は、何度か金儲け以外の目的もあるのでは?と質問しているが、社長の住友は利益ありきの事業といった考えが強いようだ。
スーパー以外の事業の依頼が増えている
超高齢化が社会的問題となっている今日、さまざまな事業者がとくし丸にあやかろうとしている。
一つは乳製品会社。定期購入が可能な健康飲料や乳製品を無料でとくし丸の顧客に配り、販促をしている。インターネットもなく、自宅に届けてくれるというサービスの存在すら知らない高齢者をターゲットにしているビジネスだ。
もう一つは福祉事業者。高齢者の孤独死が問題となっているなか、離れて暮らす息子・娘が親を心配して利用するサービス「定期見守り」。安否確認だけなら手間もかからず、すぐに導入できそうだ。
赤字エリアは撤退するのか?
そこでふと思ったのが、今まで利用していた高齢者が亡くなり、そのエリアでの顧客が減ったら、とくし丸はどうするのか?
利益が見込めなくなり、撤退するのではないか?そうすれば、とくし丸に頼りっきりだった、元買い物難民はどうなるか?
とくし丸が消えることで、多くの提携事業が機能しなくなり、また多くの高齢者は買い物なん身となり、孤独死が増える。
そもそも移動スーパーは慈善事業ではないので、赤字での撤退は自然なことかもしれない。しかしながら、社長のビジネス最優先という考えが、いつかはブレることをどこか期待してしまう。
個人が有利なビジネスモデル
しかしながら、ビジネスという点では、とくし丸はかなり参考になるマーケティング手法だ。とくし丸が回るエリアには、事前に一軒一軒訪問し、住んでいる高齢者と話して、本当に買い物に困っているかどうか聞き出す。
大量のユーザーへ無差別に発信するチラシやネット広告では絶対に得られないような、かなり濃いデータだ。
小規模ビジネスが確実に利益を上げるためにはどうするべきか?大企業と同じように多対多でマーケティングしていないか?
自分のような個人でやっているフリーランスは、移動スーパーとくし丸のようなビジネスモデルが一番最適なのではと、改めて考えさせらた。
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