私が今勤めている会社は、主に中小企業を対象としたWEBサイト制作を請け負っています。俗に言うWEB屋です。
制作するサイトは10ページから50ページ程度の小規模・中規模のサイトが多く、大体1ヶ月~2ヶ月ほどかけて1つのサイトを制作しています。
その一方で、現在私は、会社での業務以外に副業として、個人でWEBサイト制作を行っています。制作するサイトは、10ページから20ページ程度の比較的小規模のサイトが中心で、ディレクション、デザイン、コーディング、SEOを全て1人でこなしています。
その他にもアフィリエイトサイトの制作など、多い時は1ヶ月で数サイトを作る事もあります。
複数人でチームとして行うWEBサイト制作と、単独1人で行うWEBサイト制作。今まさに、両方をリアルタイムで体感している私が感じた、それぞれの制作体制のメリットとデメリットをまとめました。
複数人のチームでサイト制作をするメリット
数名が集結し、1つのチームとしてWEBサイト制作を行う場合の一番のメリットは、個々それぞれの得意分野・スキルを最大限に発揮する事が出来る事だと思います。
自分の役割という狭い範囲の中、与えられたその業務だけに集中する事によって、制作されるサイトのクオリティは高くなるという事は言うまでもありません。
分野外の分からない事があっても、すぐ仲間に聞く事ができ、そしてすぐに実践できるという事も大きな魅力です。
複数人のチームでサイト制作をするデメリット
チームとして1つの物を制作するという事は、当然ながらそれぞれの意見も頻繁にぶつかります。そうです。物作りであるクリエイターのこだわりほど面倒なものはありません。
とくにWEBディレクターとWEBデザイナーは高確率で言い合いになります。
クライアントの要件を形にして顧客満足度を求めるディレクター。自慢のデザイン力でクライアントの度肝を抜きたいデザイナー。
それぞれの思いは共にクライアントの為ですが、向かう方向性は食い違っていることは日常茶飯事です。
単独1人でサイト制作をするメリット
サイトまるまる1つを1人で制作するという事は、一見やる事が多くて大変そうにも感じるでしょう。
しかし、自分のこだわりを1つのサイトに思いっきり詰め込む事が出来るので、制作自体はとても楽しく、そして何より制作スピードが早いんです。
関わる人間が多ければ多いほど「ああでもない」「こうでもない」などと、正直無駄な意見が飛び交うものですが、1人だとそう言った心配は無用。
分からない事はどんどん調べて、どんどん作り上げていくので、結果的に意外といいサイトが出来る事もよくあります。
単独1人でサイト制作をするデメリット
1人でサイト制作をする最大のデメリットは、制作物が単調化してしまう事だと思います。
誰かとコミュニケーションをとりながら制作するという事がないので、デザインも単調になりがちに。1つのパターンに落ち着いてしまう事が、クリエイターにとって何よりの脅威だと私は思います。
予防策としてのライバルサイトのリサーチ以外にも、電車の広告デザイン、街のポスター、アーティストのミュージックビデオなど、常に新鮮なデザイン感性を吸収し続けなければいけません。
自分なりの結論
やはり私は1つの制作物を、複数の人と作るという事にはやや抵抗があります。長年WEBという仕事を続けてきて、自分なりのやり方もある程度固まってきました。
今更誰かに合わせたところで、もっと良質なサイトが作れるとは到底思えません。むしろ、余計な成約によってこれまでの養われてきた感性がゴッソリと失われるような気もします。
事実、今の会社で作るサイトより、個人で制作したサイトの方が見た目は綺麗で、アクセス数も会社のコーポレートサイトの何十倍をも集めています。
共通のルールが最も面倒
数名のチームとしてサイト制作をする今の会社で、一番面倒だと感じた事はファイルの管理方法です。
例えば画像を格納するディレクトリの名称は「img」「image」「images」の3つのどれかに名づける事が一般的ですよね。ちなみに私は「images」派です。
でもこういった事って、正直どうでもいい事だと思います。でも、こういったどうでもいい事にでも、どちらかに合わせて統一しなければという、本当にどうでもいい気使いをするのです。
みなさんはどう思いますか?これってかなりの無駄だと思いませんか?
WEBという業種であれば、HTMLコードやCSS(スタイルシート)の改行、スペース、大文字小文字など、業務上の整合性を求められる場面が多々あります。これが私にとって苦痛以外の何物でもありません。
「更新ファイルには日付をふっておきましょう」って、いつの更新したファイルかなんて、横の更新日時見ればわかるでしょう!
こんな思いをしながら、仕方なく共通のルールに合わせながら業務を行っています。
「こだわり」と「時間をかける」は別話
会社によっては、社内制作規約といった制作に関するルールをあらかじめ決めている所もあるそうですが、WEBは頻繁に人の入れ替えが激しい業界です。
そう言ったルールは、クリエイターにとって足かせになるだけだと私は思います。
そして何より思う事は、WEBサイト制作という1人でも出来る仕事を、なぜこうも複数名でやろうとしたがるのかが、全く理解できなくなってきました。
複数人のチームでサイト制作をするメリットで紹介しましたが、業務の細分化をして、それぞれの得意分野をこなすことで、サイトの質と制作スピードが増す。とでも思っているのでしょうか。
確かに、質の高いサイトが出来ると思います。しかし、スピードは間違いなく遅くなります。会社でのサイト制作の様子を見ていると、6割打ち合わせ、2割制作、2割待機です。
6割の打ち合わせのほとんどは、クライアントの要件を過剰にくみ取ったディレクターと、デザイナー・プログラマーといった制作者サイドでの「出来る」「出来ない」のやり取りがほとんど。本当に無駄な時間です。
仮に、1つのWEBサイト制作に1ヶ月間費やすとして、実質的な稼働日は20日。そのうち12日は打ち合わせです。
その中でも本当に必要な打ち合わせは、クライアント先訪問とヒアリング、帰社後の要件定義ミーティングの2日程度。
つまり、残りの10日は社内での、あの無駄なやり取りに費やされています。
私の会社だけかもしれませんが、こうしたWEB制作会社も存在するのです。
利益率の観点で考える
もうひとつ押さえておきたいポイントはWEBサイト制作の利益率です。
WEBサイト制作は、数ある商材の中でも、原価にかかるコストが最も少ないという大きなメリットがあります。
その為、単独個人でサイト制作を行う場合は、サイト制作費=ほぼ個人の収入となるほど利益率の高いビジネスなんです。
ご存知の方もいると思いますが、10ページ程度の小規模サイトでも、数十万円という制作費は一般的です。
つまり、WEBサイト制作とはローコスト・ハイリターンの優良ビジネスなのです。
ところがどうでしょう。WEB制作会社のイメージは「残業が恐ろしいほどある」「給料が安い」「こじんまりとした会社」といった、なんともブラックなイメージばかりではありませんか?
事実、私の会社も黒字か赤字のギリギリのラインを行ったり来たりしています。残業代なし、給料は大学初任給程度、ボーナスは3万円です。
https://10-plate.com/trend/859
ローコスト・ハイリターンのビジネスでもあるWEBサイト制作なのに、何故こういった事態が起きてしまうのか?
その一番の原因は、会社として、そして数名が集まってWEBサイト制作をしてしまっている事にあると私は考えます。
単純に考えて、1つのサイトをディレクター1人、デザイナー兼コーダー2人の、計3人で制作した場合、1人で制作する場合の3倍以上のスピードで作らなければ、個人よりも利益率が下がる事になります。
なのに、先ほど説明したように、私の会社では1ヶ月の稼働日である20日間のうち、半分の10日間も余計なこだわりによる、無駄な打ち合わせに当ててしまっているのが現状です。
これでは3倍以上のスピードどころか、制作スピードは半分以上落ちてしまっています。
制作スピードの問題だけではありません。3名で制作する場合は人件費も3倍です。その他にオフィス維持費、税金なども余計にかかります。
つまり、数名でWEBサイト制作をする場合、1人で制作する何倍もの案件数をこなさなければ、到底利益という言葉は遠い存在になってしまうのです。
そして、私の会社のようになかなか利益が出ないWEB制作会社は、この事態に全く気が付かないといった重傷度合いです。
ちゃんと利益を伸ばしているWEB制作会社はこうした事もしっかり考えており、制作物の単価を上げたり、効率的な業務フローを確立したりしているのだと思います。
しかし、私の勤務先のような、正にそうでないWEB制作会社は、倒産という結末に向かっているとしか思えません。
今後の展望
私自身は、現在、個人で請け負っている案件数も増え始めたので、独立を視野に入れて動き始めています。独立と言っても、これまで通り1人でWEBサイト制作を行っていくつもりです。
サイト制作費の低価格競争が激化する中、単価の釣り上げはお客さんからするとあまり好まれないので、個人でWEBサイト制作をすることのメリットでもある利益率の高さを、そのまま価格に還元するスタイルは続けていきます。
欲を出さず、自分の好きな仕事で収入を得られているという事に感謝しながら、細く長く続けていく事が出来ればと思っています。
記事のコメント